丹波竜について

更新日:2023年08月03日

大発見「丹波竜」

兵庫県丹波市山南町上滝地域には、前期白亜紀の地層である篠山層群が広がっています。

元々、生物の巣穴など当時の生活痕が化石となった生痕化石が見られる場所から、大発見の報がもたらされたのは2006年。

足立洌(あだち きよし)さんと村上茂(むらかみ しげる)さんの2名が「兵庫県立人と自然の博物館」にある物を持ち込んだのが始まりでした。

ある日、2人は泥が固まってできた泥岩層の赤茶けた岩盤の中から灰色の突起物を見つけます。地学愛好家であった2人はこれを恐竜の骨だと推測しました。博物館に持ち込み鑑定を依頼したところ、恐竜の肋骨と尾椎の化石である事が判明したのです。

翌年の2007年から本格的な発掘調査が開始され、最終的には第6次調査まで行われました。

結果、保存状態の良い歯や背骨、脳かんという頭の一部の化石などが見つかり、2014年には新属新種「タンバティタニス・アミキティアエ」として記載されるに至りました。

そして、今では「丹波竜」の愛称で知られるタンバティタニスの発見は、その後の様々な脊椎動物化石発見の追い風となります。

同産地からは丹波竜のほか、少なくとも5種類の恐竜類の歯や卵殻化石が、また篠山市からはトロオドン類や角竜類、哺乳類、トカゲ類などの骨化石がそれぞれ採集されました。

「丹波竜」はどうして凄い?

丹波竜。正式名称は「タンバティタニス・アミキティアエ(Tambatitanis amicitiae)」。

この恐竜の学名は産出地である「丹波」と、ギリシア神話の女巨人「ティタニス」、発見者2人の”友情”を意味するラテン語の「アミキティアエ」を組み合わせたものです。

全ての骨格は残念ながら発見されていませんが、尾椎という尻尾の骨から独自の特徴が見て取れたために竜脚類の新属新種である事が分かりました。

竜脚類というのはブラキオサウルスなどに代表される長い首と尾を持った、非常に体の大きい植物食恐竜のひとつです。

しかし、丹波竜は見つかった骨から推測される全長が十数メートル。日本で見つかった中では最大級の陸上生物ではあるものの、竜脚類の中では小型の部類に入ります。また、その骨の形態から主に白亜紀に繁栄したティタノサウルス形類の中でも、比較的に原始的なタイプであると考えられています。

前期白亜紀のティタノサウルス形類は産出数が少なく、世界レベルで情報が不足していました。

そんな中、「丹波竜」は前期白亜紀の地層から見つかったため、タンバティタニスの持つ様々な特徴が、ティタノサウルス形類の進化の解明に役立つのではないかと注目されているのです。

「丹波竜」はどんな恐竜?

「丹波竜」で一番目立つのは、やはり長い首ではないでしょうか。

また、その大きな体を維持するためにはたくさんの食糧を常に食べていなければなりません。「丹波竜」がどのような恐竜だったのかを考える時、これらの情報は大きなヒントとなるのです。

例えば、巨大な体で歩き回る事はそれだけで大きなエネルギーを消費してしまいます。しかし、長い首があれば、動き回らずともその場で首を動かすだけで広い範囲の植物を食べ続けるというスローライフを実現する事ができました。

見つかった歯の化石から分かる事もあります。

「丹波竜」の歯はまるで鉛筆のような形をしており、大きな体には不釣り合いなほど華奢です。これは私たち人のように口に含んだ物を噛んでいたのではなく、櫛に通すようにして摘み取った植物を丸のみしていたためと考えられます。そうする事で、噛む時間を短縮し、より多くの食べ物を食べる事もできたでしょう。

さらに、肋骨の骨からも大切な事が分かりました。

「丹波竜」の肋骨模型を組み立て、胴体部分を復元すると、大人6人が入ってもまだ余裕があるほどの大きさである事が分かったのです。

肋骨の内側には生物が生きていく上で大切な臓器がありますが、中でも消化器官が占める割合はとても大きく、「丹波竜」は巨大な消化器官を用いて丸のみしていた植物を分解していたのだと考える事ができました。

このように、見つかった骨から当時の恐竜の生活や環境を推測する事ができるのです。

参考資料

  • NHKダーウィンが来た!生き物新伝説(特別編集) 知られざる恐竜王国!! (講談社MOOK)
  • 県政150周年記念国際シンポジウム講演要旨集
  • 最新版!恐竜のすべて (宝島社TJ MOOK)
  • 世界に誇る!恐竜王国日本 (宝島社TJ MOOK)
  • 大地とくらしのガイドマップ(2018年2月) (丹波地域恐竜化石フィールドミュージアム推進協議会)
  • 楽しい日本の恐竜案内 (平凡社)
  • 毎日小学生新聞 むかしのせかい(39)(2016年2月8日)
この記事に関するお問い合わせ先

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